『生活時間にみる子どもの生活活動の実態 −多摩ニュータウン在住の子どもの生活時間2000年調査−』
研究目的 近年教育の現場で子どもの生活自立能力の低さが問題視されており、特に家庭科の学習では生活の場での実践が重要視されている。その一方で今日の子どもは塾通いなどで生活時間を狂わせ長時間労働による父親不在、母子密着など家庭内の生活時間のずれが親子のコミュニケーションを取り難くしている。生活での実践の可能性は子どもの生活時間構造において家事・育児費やす時間が取れる状況にあるかどうか、家庭での指導者的存在である親との時間が確保されているかどうかといった家族全体のライフスタイルと密接に結び付いている。子どもの生活活動をめぐる問題は家族との関わりから捉える必要があり、本研究は子どもの生活実態を家族の生活時間や親の就労形態など家族全体の生活スタイルとの関わりから捉えることを目的とする。 本研究は、現在データが少ない0歳児から18歳までと子ども期を包括した生活時間調査を行うことにより、年齢階層を追った行動の変化や人間関係の相違を見ることが可能になった。また家族全体の生活を捉える方法として、大竹が1985年より行ってきた生活時間調査のフィールドで調査を行う。親も含めた家族全員の生活時間及びアンケート調査のデータから家族を関わらせて子どもの生活構造の相違や意識を分析することに独自性を持つ。 研究方法 調査対象者 ミニコミ誌や保育園・地域の子ども会活動等のグループを通じて多摩ニュータウン在住の子どものいる家庭を募集した。 調査方法 郵送留め置き法で行い訪問回収した。 調査内容 @2000年10月1日〜15日のうちの平日・土曜・休日各一日の24時間について「行動」と「一緒にいた人」と「場所」を問う生活時間調査 A @と同様の期間、生活時間で捉えられない世帯や子どもの属性や普段の活動等を問うアンケート調査 B2000年11月から12月に子どもを含めた世帯に対する半構造的面接法によるインタビュー調査 であり、それら3つの調査を組み合わせて子どもの生活活動を多角的に分析する。 集計対象者 配布323世帯回収279世帯(回収率69.4%)総計435人の子どものデータを得た。435人のうち働いている者と記入もれが多い者を除き0歳から18歳までの計358人を集計対象とした。 集計方法 生活時間調査 @一日24時間を10分ごとに144区分 A行動を31項目(2桁)、一緒にいた人を16項目(2桁)、場所を9項目(1桁)にコード化 B36×16×9=4464の生活行動に分類 C4464の生活行動を144区分毎にエクセルを用い集計した。 アンケート調査 エクセルを用いて集計した。 インタビュー調査 会話内容全てを文字化(トランスクリプト)し、必要な部分を抜き出して分析した。 分析の枠組み 子どもの生活についての分析は @年齢による変化 A性別による相違 B母親の就労による影響の3つの視点から行っている。 またBをみるために、サンプルを母親の就労形態別に4つの属性に分類した。4つの母親の就労形態別とは父親が雇用労働者の対象者を母親の就労形態別に「母常勤」「母パート」「母自営業」「母無職」に分類したものである。 結果 その結果以下のようなことが明らかになった。 @
加齢による変化では「生理的生活時間」の減少と学業時間の増加、「余暇的生活時間」におけるテレビの割合が増加した。年齢階層が上がるつれ家族(特に親)との時間が減少し、中学生・高校生の平日の父親との共有時間はそれぞれ平均20分、18分(父親とのみ過ごした時間はそれぞれ3.9分、4.1分)とわずかであった。 A
性差は「家事的生活時間」が男子より女子で顕著に長かった。「体育系クラブ」は女子より男子で、「文化系クラブ」は男子より女子で長くクラブ活動時間にも男女差が存在した。また余暇活動では「交際」が男子より女子で長い等の相違がみられた。 B
母親が常勤で働いている世帯では「家事的生活時間」に性差が生じにくかった。また未就学児では母子の共有時間に母親の就労形態による差異はなかった。また未就学児の父親との共有時間は母親がどの就労形態よりも就労形態よりも常勤で働いている世帯で特に長かった。 今後の課題 本研究では母親の就労形態に着目して分析を行ったが、今後父親との交流に焦点をあて、父親の就労形態や収入労働時間による子どもの生活への影響についても見て行きたい。 生活時間分類においては「家事的生活時間」における「買い物」時間は余暇的・娯楽的要素もあり、これらをはじめとした行動分類の妥当性を再検討する必要がある。 研究の限界 「買い物」が余暇的な活動であるか家族の生活の為の家事活動であるのか、母親や父親と過ごした時間の関わり方について等生活時間調査において行動の意味までは分析できない。 |